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編集長コラム「商売は缶性」 第1回 明治屋のコンビーフ

全国で缶詰取材を行う中で出会う商売人。結局商売で重要なのは、その人の感性。そんな個性豊かな「缶性」を紹介するコラムです。皆さんの商売のヒントになれば。

 第1回は、明治屋商品開発部、大石由夏さんの「コンビーフの法則」。

 2023826日に発売された明治屋「おいしい缶詰 大人のプレミアムコンビーフ(トリュフ風味)」が好調だ。明治屋のコンビーフと言えば、2014(平成26)年発売の、同おいしい缶詰シリーズの「プレミアムほぐしコンビーフ(粗挽き黒胡椒味)」。おいしい缶詰シリーズは「ちょっとぜいたく」な「Ready to Eat」をうたうグルメ缶。その中でも不動の人気ナンバーワンの座を誇る。

 2020年には「大人のプレミアムコンビーフ(燻製風味)」を発売。トリュフはコンビーフシリーズ3作目となる。

 正直、コンビーフがどかどか売れる印象はない。その中で、同じコンビーフで横に広げるということは、同じ財布を食い合うだけにならないか?

 「それぞれの個性を明確にして開発した。ただ単に作れるもの、おいしいものを作るというのではなく、明治屋ストアーやその他のお客さまの声から、どのような時にどのように食べていただいているのか、最初ヒットした粗挽き黒胡椒味の評価をきちんと分析し、必要とされるものを作った」と大石さん。

 私がハイチュウの法則と呼んでいるものがある。簡単に言うと、ハイチュウはリンゴ味だけ店頭に置いてあるよりも、リンゴ・ブドウ・梨と3種類並んでいるから、客が買うか買わないか、ではなく、どの味にしようかな、と選択することになる。つまりその時点で買うことは決まっている。単品で置くよりもバリエーションがあった方が売りやすいという法則。逆に種類が多すぎると売れなくなるものもあり、ものの特性やバリエーションの出し方によって結果は大きく変わってくる。

 赤・青・黄色と3色あっても、どれもほとんど中身の差が分からないようであれば、ハイチュウの法則は成り立たない。今回のコンビーフに関しては、バリエーションを出すというが、結局、コンビーフは、そこまで変わらないのでは?

 「粗挽き黒胡椒味はビールに合う、という声がとても多く、次の味を作るときにはその声を意識して、ウイスキーに合うものをということで、燻製味に行き着いた。おいしい缶詰は今年10周年を迎えたが、その機を前に人気のコンビーフでもう一つお客さまに楽しんでもらうバリエーションを、と考えたときに、まず浮かんだのがワイン。ビール、ウイスキーと来たら、明治屋ストアーでもたくさんのお客さまに利用いただいているワインに合うコンビーフを作ろうじゃないかと。同時に、どんなものがマーケットで受けるのか、消費の動向や他商品、例えばポテトチップスなどの味に至るまでいろいろと調べた結果、トリュフ味が今は人気で、これからも伸びていくのではないかというデータが出てきた。トリュフなら赤身肉にも合うし、ワインにもぴったりだと」

 実際3種類を店頭に並べて、コンビーフ自体の消費が増えているのか?

 「まさに相乗効果で、3商品ともよく売れている。原料高騰などで当社でも値上げせざるを得ず、既存2商品の売り上げが少し落ち込んでいたが、トリュフ味の発売が寄与して、既存商品も売り上げを伸ばしていて、プレミアムコンビーフ合計で前年の販売数字を超えている。トリュフ味は明治屋ストアーで自社のイタリア赤ワインと組み合わせるプロモーションを実施したところ、あっという間に売り切れる店が出るなど、シーンの提案が非常に効果的だと感じている」

 「缶詰全体で見ると、500円だとまだ抵抗なく買ってくれるが、600円ともなるとなかなか(動かない)。そんな中で、黒胡椒で650円、トリュフで680円と、マックスを攻めたともいえるコンビーフシリーズが好調を維持しているのには非常に勇気づけられる。もともと『Ready to Eat』がコンセプトで、50代男性がお酒のお供にサッと買って、パッと食べる。それが、コロナを機に、「ちょっと手を加える」、例えば、そのまま食べるのではなくカルボナーラの具材にするなど、そんな30代の層を中心に、新しい層にも販売が広がっている」

 当社論説主缶・黒川勇人「プレミアムコンビーフのシリーズは、赤身肉が主体で脂分が少ないため、男性だけでなく女性にも好まれている。肉のほぐし方が粗いのも特徴で、肉をかんでいる満足感が得られる。さらにワインやウィスキーなど、酒類に合わせて風味を変えたバリエーションを展開しているのが、いかにも明治屋らしい」

今日の教訓!!

ハイチュウの法則にのっとってやみくもにバリエーションを広げるのではなく

それぞれのバリエーションにきちんとした個性を持たせ、

客の購買シーン・食用シーンを想像すること

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