共同船舶の新捕鯨母船が完成 下関でお披露目
共同船舶(東京都中央区)が4月3日、3月に竣工した新捕鯨母船「関鯨丸」をお披露目した。船の寿命が通常30年といわれる中、関鯨丸の先代に当たる日新丸の船齢が35年を超え、対応が注目されていた。
関鯨丸
関鯨丸は国産としては73年ぶりに新造された捕鯨母船で、電気推進式システムの採用やドローン用デッキを備えるなど最新鋭の設備を備え、船体自体の大型化により大型クジラの引き上げを可能にした。建造費は75億円。
同社は世界で唯一母船式捕鯨を行う。母船式捕鯨とは、クジラを探して捕獲するキャッチャーボートと、海上で加工・保存を行う捕鯨母船が必要となる。母船の建造には高額な投資が必要なことから、沿岸に捕鯨基地を建設して捕鯨船が捕獲したクジラを水揚げする「基地式捕鯨」に転換するという考え方もある中、同社は母船式捕鯨にこだわる。
所 英樹社長は「日本の気候では基地式捕鯨の場合、海上を運搬中にクジラが劣化する可能性が高い。日本の鯨肉文化を守るため、母船式捕鯨が必要不可欠」と話す。
日本は2019年にIWC(国際捕鯨委員会)を脱退。32年続いた調査捕鯨をやめ、商業捕鯨に移行したが、国内の消費は伸びていない。
「クジラは年間で、その体重の約15倍もの水産資源を食べている。地球上で合計すると、人間の年間漁獲量の3倍から6倍の量になる。食物連鎖の最上位に君臨するクジラを過剰に保護することは、海洋生態系のバランスを崩すこと。海のSDGsへの貢献という視点からも、また日本の食文化を守るという考えからも、鯨食文化を守っていきたい」
「この新母船の建造で、これから30年間は鯨肉の供給責任を果たせる。その次の30年は次の世代に考えてもらいたい。長い母船式捕鯨の歴史をつなげたということ。今の捕鯨量は100年同じ量を取り続けてもクジラ資源に何ら影響を及ぼさない保守的な捕獲枠であり、この建造を機に、さまざまな形でプロモーションを行い、鯨食文化を広めていく」(所社長)という。
関鯨丸は5月21日、下関港から初出港する予定。